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スティルライフ, I follow the sun

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「ホテル・ルワンダ」

■ 2007/05/01 Tue 17:21 「ホテル・ルワンダ」

冒頭にきこえる音楽…子どもたちの歌声、を聞いてわたしは
きれいな音楽だね、と、言った。

そうして映画の最後に流れたその歌詞は、こんなようだった。

 「 わたしたちの上に太陽はいつ戻るのだろう
   誰がそれを とりもどしてくれるのだろう 」

……たとえばこの差が、私=東の国にすむ日本人と
映画のなかで繰り広げられるルワンダでの現実の差だ。

南アフリカ、と
アパルトヘイト、と
ツチ族とフツ族のあいだに起きた大虐殺、のことが
あたまのかたすみにあれば、たぶん
この映画が残りのことを、じゅうぶん補って
この平和な国のわたしたちは声がでなくなるだろう。
そこまで、迫るところへいけるだろう。

この虐殺があったとき、現実の私は小学生で
10歳にもなっていなかった、、、のだけれど
アフリカでたいへんなことが起きていることだけはよくわかっていた。
そのたいへんなことが、たくさんの人がどんどん殺されていること、なのも
よくわかっていた。

でもその先やその前のことは、ぜんぜんわからなかった。

さっぱりわからないなりに、新聞を読んだりしてみたけれど
どうして、「虐殺」が起きなくちゃならないのか、は
やっぱり全然わからなかった、、、
その後、国連高等弁務官になった尾形貞子さんの談話やら
黒柳徹子さんの「トットちゃんとトットちゃんたち」、
はたまた、難民にかかわるいくつかの話を読んでおぼろげながら
起きた事態がわかった、くらいのことでした。
からみあった民族の間の感情の、暴発のこと。

主人公になるホテルの支配人ポールは、殺す側の、フツ族です。
そうして、彼の奥さんは、殺される側の、ツチ族です。
……じゃあ、二人のあいだの、子どもは?

半分は互いの血が入っているから、事態はそれでも悲惨だそうです。
例えば、子どもが四人いたら、
二人は助けられるそうです。
そうしてあとの二人は、殺されるそうです。
例えば、子どものなかに大きくなった女の子がいれば
民族浄化、という題目のもとに、強姦されるそうです。
きのうまで子どもを抱き上げていた手で
ナタを持って、違う「ツチ族」の誰かのからだに頭に
それを、叩き込みに行く。

……ある日、そんなになってしまった世界のなかで
ホテルマンの彼は家族と、近所のひとたちを守ろうとして必死になり
彼の好きなホテルを守ってくれてきたひとを助けようとかけずりまわる。
「自分はフツだから外を歩ける、殺されない」というのが
彼の、たったひとつの拠るべき柱に思えた。
すごくか細いのに。
でも奥さんには笑顔を見せて。

はじまりはただの人だった。
正義の味方じゃない、大きな考えを持っていたわけでもない、
ただ、殺したくなかった、死なせたくなかった、殺されたくなかった。
守りたかった。

ひとつ、すごく新鮮だったことがある。
ひどく顰蹙をかうかもしれないけれど
それは
この映画に出てくるひとが、みんな黒人だということです。

いや、白人も出てくるのだけれど、それは
平和なホテルの泊り客としての「通行人」であって
ただの背景に近くあり。
ただ、存在を見せ付けるのは、彼らが
どんどん情勢の悪化してゆくルワンダから国外退去するとき、
ホテルに、支配人をはじめとして逃げ込んできた現地の人、子どもたち、
シスターたちの集団を残して、母国から「救助」にきたバスに乗り
雨のなか、ホテルを去ってゆくときだけだった。
なまえのない、ただ、
平和に守られている人の集団として。

二人だけ、顔のある人がいた。
それは虐殺に、暴動に巻き込まれていく人、
国連から派遣されてホテル近くにいた軍人と、
NGOの活動なのか孤児院で働いていた女の人。
でも彼らは、顔があるから、カラーズでなくても、平和のなかには行けない。
「平和維持軍だから」襲撃されても手を出せないなんて
クソヤロウだ、と絶叫とむしりとって叩きつけたベレー帽や
赤ちゃんはみんな殺されてたわと言うときの、よごれた金髪、

それをたぶん、友人として頼ったり愚痴ったりなぐさめあったり
ただ、かなしげに見下ろしていたりする、ポールと彼ら。
つねにつねに、
憎しみじゃないところから。
とても深くてくろぐろとした、なにかの湛えられた目。

それは、国というものを、いっそ理不尽に思えそうな
一連の風景でした。



data :
「ホテル・ルワンダ」テリー・ジョージ監督脚本、2004年、南アフリカ・イギリス・イタリア、122分
原題 : 「HOTEL RWANDA」
「愛する家族を守りたい。」
ただ1つの強い思いが、1200人の命を救った…。
ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、ホアキン・フェニックス、、、
2004年アカデミー賞、主演男優賞・助演女優賞・脚本賞ノミネート
2004年度トロント国際映画祭、観客賞受賞
2005年度ゴールデン・サテライト賞(ドラマ部門)
 作品賞受賞/主演男優賞受賞/オリジナル主題歌賞受賞
ほか
by stelaro | 2007-05-01 17:21 | コトノハ:cinema