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スティルライフ, I follow the sun

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「ヴィレッジ」

■ 2006/06/08 Thu 「ヴィレッジ」

また、かなしい物語を見てしまった。

ほんの少しの怯えと
わずかな恐怖と
たくさん、たくさんの悲しみ。
それは、禁断の森の中にただそこだけ毒々しく散らばった
おびただしい赤の実のように、そこらじゅうにあって、
そうして、この先も
ていねいに、隠されていくのだろう。

知らされていない過去から、今、そうしてこの先まで、
流されない涙でできている話。

もしも、圧倒的な感情を「ホラー」と名づけるのだとしたら
この映画はまったくそのとおりのホラー映画であるけれど
そうでないとすれば、
かなしみを背負っている愛情の物語とでも、わたしは呼びたい。

禁断の森の中に、なにもしらずに、それでも
入っていくゆるしをください、と
ただひたむきに訴える盲目のひとみが、ただただ、美しかった話。
その、少し細められた木の実のようなかたちが、かすかにふるえながら
それでもひとつのことを見定めようとしていて、それに
逆らうことなんて、できるひとはいなかったような気がする。
架空の話であっても。

まるで時代のない村、
魔法でもかけられていそうな場所。
恐怖から解き放たれた
素朴であたたかい住人たち、ひるがえるスカートとブーツ。
……無垢?

このユートピアのために
あなたは
あのひとは
何を犠牲にしているのだろう。



data :
「ヴィレッジ」M・ナイト・シャマラン監督、2004年、アメリカ、108分
その≪地上の楽園≫は、
奇妙な≪掟≫に縛られていた…。
――何故?
ブライス・ダラス・ハワード、ホアキン・フェニックス、エイドリアン・ブロディ
2004年アカデミー賞作曲賞
by stelaro | 2006-06-08 23:50 | コトノハ:cinema