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スティルライフ, I follow the sun

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「カラスの飼育」

■ 2005/07/22 Fri 「カラスの飼育」

なんとまあ、不思議な瞳をしたひとでしょう。

透徹している、ということばを思い出すと
ときどきそれは、少女のまなざしになると思う。
あたたかくない、けれどつめたいわけではなくて
ただただ、まっすぐに、みひらかれていて。

善とか悪とかにわかれきる前にたゆとうているかなしみのように。
物語自体もまた、交錯してはてしない
難解といえば難解?
……けれど目の前にひろがるのが紛れもないリアルなのだから
ただ、そのくりかえしのなかをするすると歩いてゆくしかない
黒い髪、黒い瞳。

階段をすべり歩いていく寝巻きすがたをみて思った、
あ、バレリーナの子だ。
……どこまでもするりとした姿だから
ほそくてまっすぐな身体だから
まだ、身につけていないかもしれない肉体で、
けれど、地上には降りていて。

くりかえし流れる音楽がざらついてチャーミングで好き。
そういえば、地中海のあたりからずっと、ミハスの街からバスに乗って
岩ばかりの山のなかを何時間もずっとぼんやり
うつらうつら外を眺めていたとき
……こんなふうな、ざらざらとして魅力的な音が
ずっと聴こえていたっけ。
異国音。

 「駅の前で子供みたいに泣くの あなたが行ってしまうから」

どこまででがほんとうで、どこまでがでたらめ?
そんな区別もいらず……なぜって、すべてがほんとうで
そのただ中で揺られていくことだけだから。
銃口をふらふらと構え、熊さんのハグをもとめ、夢をみて。
「まだ起きているの?」「眠たくないの」
「死にたいの?」「死んじゃえ」……どこにもなんら毒はない、ただ
なにもかもが鋭い。鋭くてたまらない。

ミルクの中に毒を入れても
翌朝は、笑顔でむかえることができる生きもの。

きっと、そんなふうでした。
たぶんみんな、そんなふうでした。



data :
「カラスの飼育」カルロス・サウラ監督、1975年、スペイン、107分
アナ・トレント、ジュラルディン・チャップリン
1976年カンヌ映画祭審査員特別賞

……ひゃあ今気がついたけどこの映画って私より古いん?古いん?
なんだかショックです、、、どうしてかショック。(T_T)
by stelaro | 2005-07-22 15:07 | コトノハ:cinema