ある日、出会ったしま子ちゃんの
「装飾品だらけの左手」に
なぜかあこがれてから10年いくつか?
やっとのことあたし動く
不安やら枷やらにまみれて、でも
駆け出すにはあんまりちからが足りないが
少しずつあつまった「装飾品だらけの右手」がからだわしづかんで
付属しないのは、時計だけ。
クリック・クラック・クロック
いってきます、よりも逃げ出すにちかく
くさはらにむかううさぎのように。
でもそれほどにはあかるくなく…わだかまり重たい痛み、
熱、炎症、くずれ、しかし
あたし、あるく。
荷物をひきずって
ふわふわしながらなきながら
これはユメかとうたがいながら
ぶあついこの、硝子の塔に、おさまったまま
でも、たぶん、
くるまれたなら
きっと、うたう。
きました、と言ったら、せかいは
よくきたね、といってくれるのかな
繋がっているけれど見えなくなっていた空は海は
…なにもかんがえずに逃げ出す旅立つ
4月、たくさんの桜のみえる日
しま子ちゃん;『流しのしたの骨』江國香織、より